22 September 釣りと日本語とわたし 独立記念日の18日の前後は、ゴールデンウィークのような1週間があり、その週末に初めて在チリ日本人主催の釣り合宿に参加させてもらって来た。ところで、私の(というか我が家の)通常の交友範囲は、娘の学校のチリ人ママ友や、日系友達と集まることが多くて、個々で日本人のお友達はいるけれども、家族ぐるみでの日本人家族との付き合いというのはほとんどなく、大体学校が同じとか、子供同士が仲良しのところに親がくっついていく、というのが週末のパターンだったのだけど、今回は、日本人学校の子供達を中心にした家族が多数参加している全体で40人以上もいる日本人のグループの釣り合宿ということで、私達がもともと知り合いだったのは数人で、あとはほとんど初対面の人ばかり。さらに二泊三日の泊りがけで出かけるという一大イベントだったので、お話をいただいた時、最初は若干心配もあったものの、もし行かなければおそらく日系友達といつものアサド(BBQ)か、遠出しても日帰りで釣りに行くくらいしかやることがなさそうだったので、せっかくだから参加してみようということになった。 今回の釣り合宿における我が家のメインテーマは2つあって、一つは、釣りキチガイのパパのための釣り。と、もう一つは日本人の子供社会に娘を接触させてみること、だった。サンチャゴには日本人学校があって、そこには日本人の子がたくさんいるのだけれども、娘のように現地の普通のチリ学校に行っている子とでは、なかなか接触する機会が少ない。だから、現地校に行かせている日本人の親は、たまに日本に帰った時に日本の学校に短期の間でも通わせて、日本の子供社会に慣れさせたり、色々努力されているようなんだけど、我が家の場合、そんなにちょくちょく日本に帰れるわけではないので、ほっておくと日本人の子供と遊ぶような機会を持つことができなかったりする。もちろん現地校に行っている日本人の子供に、日本語で遊べる友達がいるのだけど、それは子供社会ではなくて、一対一の付き合いだし、最終的にスペイン語で遊んでしまったりするので、やっぱり少し違う。言語だけじゃなく、日本人の子供社会と、チリ人子の子供社会では全くルールが違う。現地校に行っている子同士の社会ではチリルールになってしまう。そういうわけで、日本人の子と日本語でどのくらい遊べるのか、日本人の社会ルールにどれくらい馴染めるのか、それが今回の母子テーマだった。で、結局どうだったかと言えば、それは大成功だった。娘は帰りたくないというほど皆と遊べたことが楽しかった様子で、「みんなと出会えてよかった」と、今まで聞いたことの無かったようなセリフを述べていた。一体どこからその言葉を切り取ってきたのか、本当に面白い。合宿前だったら「遊べて良かった」とかだったと思う。”出会う”という単語は、この合宿中、誰かから拾ってきたものだ。もう一つ、彼女が合宿で覚えてきた言葉が 「わたし」 である。行く前、彼女は自分のことを「ちーちゃん」とか、言っていたと思う。もしくは 「yo」。家族同士で話していて、私が自分を「わたし」ということはあまりないし、彼女のことはいつも名前で呼ぶ。だから、彼女の世界で、一人称を「わたし」で呼んでいる人はいなかった。でも、今回の合宿から、なんにでも「わたし」が付くようになった。「わたし このおにぎり食べる」という具合である。なんだか必要のない場合にもつけているので、若干日本語としてはおかしいのだけれども、日本語環境ではじめて、私という社会的な代名詞を獲得したのか、と思うと非常に感慨深い。「ママ、あの子はね、自分のことを ”オレ”って言ってたよ!!オレだって!!!変なの!!」とか。。どっちが変なのか分かってないところが5歳児なんだけど、とにかくよっぽど楽しかったのに違いない。我が家では日本語の簡単な会話や、読み書きに問題がないように、家でホームスクーリングしたいと思っていたけれども、やっぱり言葉というのは社会があってこそなんだなー、とあらためて感じた出来事だった。やっぱり”友達”というのは、何にもまさるモチベーションなのだ。そして他の国では、現地校に行っている子供向けの補習校というものがあったりするというのは知っていたのだけれども、チリにも補習校が出来ればいいのに、とまた思った。ないし、現地校の異常に長い夏休みの間だけでも、日本人学校に参加できるようなシステムにしてくれれば、現地校に行っている子にも、日本人学校の子にも、お互いに刺激になると思うのだけど。。。日本人学校の校長先生、どうかご一考をお願いします。 [8回]PR