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22 February

バカの罪と罰

この間突然新体操クラブのママの一人から大切なミーティングがあるから集まるようにと、突然平日の夕方に召集があり

夏休みの平日の、練習の日じゃないのに、何の話かと、またどうせお金の話だろうといやいや出かけて行ってみると、いつもかしましいママ連が神妙な顔で集まっている。
明らかに何か知っている人達と、何もわからずに呼び出された人の温度差が激しい。

18時になると同時に、新体操の先生(先生でありクラブの責任者)が重い口を開いた。

彼女の話ではこうだった。

新体操クラブは毎年国の助成金を受けているけれども、2019年の助成金申請が却下された。
今まで一度も却下されたことがないし、年間100万円くらいのものだけれども、毎年それを使って主には大会運営や、特別プログラムの参加なんかが行われるらしい。
今回却下された助成金は、クラブにとっては致命的なお金なわけなんだけど、それ以上にこの問題が致命的だったのは、この却下の直接の原因が、前回の助成金申請に使われたファクトゥラ(つまり請求書)が偽物だったということが発覚したから、だった。

私はとんと知らなかったことなんだけど、去年クラブは、クラブのコーチの旦那、ビクトルの“会社”に、去年クラブで開催した大会の運営を委任していたらしい。ずっとではないと思うけど、少なくとも問題になったその年は、ビクトルに任せてしまっていた。
たぶん、新体操クラブの責任者のマルレンは、コーチのガビの恩師でもあるし、ガビとビクトルの20代の夫婦の生活を助けるために、大会運営をビクトルに任せたんだと思う。
例えば、大会を作るときにデコレーションや、メダルや、トロフィーなんかを買ってくるとか、業者を頼むとかそういうことをやらせて、その手数料をビクトルが受け取るような仕組みという感じなんじゃないかと思う。スポーツイベントコーディネーター的な会社みたいな。

つまりクラブは、ビクトルの会社に対してお金を支払っていた。ビクトルはそれに対して、ファクトゥラをクラブに渡し、そのファクトゥラをもって、クラブは国に助成金の請求をし支払われたのだった。

ただ、ここにきて、このビクトルの“会社”というのは実在しておらず、ファクトゥラが偽装だったことが発覚。

公文書偽造ということで、ファクトゥラをクラブに発行したビクトルではなく、その請求書をもって助成金の請求をした、マルレンとその時のクラブの代表としてサインした2人のママ、それから現在の代表のママ2人がこの助成金の返還請求なのか、訴えられたのか、とにかく国からの呼び出しを受けていて、明日は弁護士と打ち合わせだ、というのが今回の緊急呼び出しの内容だった。

チリでは請求書や、領収書というものは公文書になる。日本だと請求書は会社の中で番号を付けて、保管しているけれども、そういうレベルではなく、チリでは請求書や領収書を発行するには会社のRUTを持っていなければならず、それは国税局に申請して初めてもらえるものになる。
会社が出したり受け取ったりした出したファクトゥラは全部国税局のHPで見ることができる。チリでは社印にあたるようなものもここに登録されているし、そういうものはすべてが電子化されている。チリではもっとも進んだ分野だと思う。税金の取り立てに抜け穴がない。笑
会社のRUTですべて追跡されている。消費税に至っては月々申告して払わないと、罰金までとられるという厳しさだ。


かくいう私の起業も先だって国の助成金を受けたので、そのファクトゥラ提出の厳しさは骨にしみているというか、だからいつも紙で打ち出されたものではなくて、SII(国税局)の自分のページからファクトゥラエレクトロニカという電子請求書をダウンロードしてそれを保存していた。起業の助成金については厳しく、何に使うか使予算を立てさせられたし、その変更は認められなかった。実際にその商品が手元に届いたか、写真を撮って添付しなければならなかったし、助成金申請はIVAという消費税の還付についても煩かったので、たぶんそれはスポーツの助成金でも同じではなかったかと思う。

今となって思えば、あの無用と思えた手続きのめんどくささは、こういう助成金詐欺が後を絶たないからなのかとも思えた。

だから、この話を聞いたとき、ビクトルがまずファクトゥラを偽造したというときに、すぐにSII(税務署)で確認したらわかったと思うし、(毎月申請していれば、いやでもネットでそのページを確認しないといけないから、見ないというのはよくわからない。)
そもそもクラブの年度末の会計報告書すら見たことない。会計士がいたとも思えない。そもそもクラブ側の管理も結構ずさんだったんじゃ、と思ってしまった。

そしてビクトルもなぜ本当に会社をつくらないで偽造なんかしてしまったのだろう。確かにめんどくさいけれど、会社を作ることはそれほど大変なことではないし、お金もかからなかったはず。公文書偽造するくらいなら、ほかにいくらでも方法があったと思うのだけれど。


泥棒だ、詐欺だ、車を売って金を作って償えとママ達にののしられていたけれど、、、でも実際に大会は行われたわけだし、100万円をネコババしたわけではない。
でも確かに彼らはどうしてそんなに裕福でもないのに、安くもない新しい車を買えたのだろう。

絶望的にだらしなかった、しかもずっとのらりくらりと自分の会社がないこと、請求書が発行できないという本当のことを言わなかった(のか言えなかったのか)公文書偽造で他人に多大な迷惑をかけた(こんな騒ぎになるほどのことだとは思ってなかったのではないだろうか)ことは本当であるけれど、100万円のうちのいったいどれくらいを利益として抜いたんだろう。

仮に30万円、いや、50万円だとしても、ここで、夫婦ともども職を失い、車を売らされ、親兄弟親戚縁者に言って回るみたいなことを言われ、娘は新体操を続けることができない。
たぶん二人の娘もまた学校を変わらざるを得ないだろう。
この危機を夫婦が乗り越えられるとは思えない。しかもcertificado antecedentesという、前科がないかみたいな証明書にだって傷がついてしまう。そんなことと引き換えにできる金額には到底思えない。

コーチのガビは3年以上もうちの娘のコーチだったし、旦那のビクトルも体育の教員なので、事あるごとに大会や、クラブに必要な時には借り出されて手伝いをしてきた。
正直、クラブの父兄の中で私は一番気が合うというか、いい人、って感じの人だったし、たしか家はエバンヘリコで一族に司教がいて、みたいな感じのかなり敬虔なキリスト教徒だったし
だから、彼に子供向けの聖書を借りたこともあったから本当にこんなことがなければ、彼を一言で表現するなら、いいパパだった。

彼らの長女はうちの娘と同じ年で、同じカテゴリーなので、今年はデュオをさせようか、などとこの間も話していたところだった。そんな縁もあり、泊りがけで遠征に行った時もよくしてもらった夫婦だっただけに、わたしはなぜこんなことになったのか、残念でならない。
犯罪としてやるにしてはあまりにも金額が割に合わない。借金でもあったんだろうか。

もしかすると、ただ無知だっただけなんじゃないのだろうか、請求書が適当でもごまかせるんじゃないか、それくらいの気持ちだったんじゃないか、考えれば考えるほど意味不明すぎる。
そしてたぶん、驕りがあったんだろうと思う。どうにかできる、逃げ切れるという驕りが。

浅はかというのはチリ人の気質の一つではないかと思うくらい、行動を起こす前に何も考えない人が多い。そしてその上に特にチリ人の男は、やたら変なプライドが高い。
そのプライドのためにいいように見せたくて、言い訳をする嘘をつく。嘘に嘘を積み重ねる。


病的な嘘つきや恥知らずというよりは、ただのバカだったんじゃないかと思う。
ただのバカ、されどバカ。バカは時に大きな災厄を生み出す。

PTA会長くらいの気軽さで、クラブの代表を務めたママが任期を終えた今いきなり国に呼び出されている、もしかすると彼女に前科が付いてしまう、そんな事態になっていることが気の毒すぎるけれど、だからこそ気軽に何かの契約書、それが仮に学校の役職であっても、にサインしてはいけないことを改めて痛感。

教育の重要性と、もらい災厄の怖さを改めて考えさせられた出来事だった。


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