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心配していた震源地に近い南部マウレのワイナリー、レセルヴァ デ カリボロ(エラスモ)、ギルモアからも連絡をもらうことができました。
幸いにもワイナリー以外の建物(家屋やラボ、ゲストハウスなど)には甚大な被害があったものの、ファミリー、ワイナリーメンバーに死傷者はなく、すでにファミリー、ないしワイナリーメンバー、村民が一致団結して
”さあ、この騒ぎを片付けよう”
と立ち上がったというメッセージが、メールや写真から読み取れ、その力強さに心を打たれています。
今回、大きなワイナリーの大きな被害の報道がされてきましたが、大きなワイナリー(もしくは大量のワインを持っていたワイナリー)にはワインに大きな被害が、小さなワイナリーはワインにはあまり被害がなく、家屋の倒壊が多かったことがわかってきました。
(ちなみに大きなワイナリーと小さなワイナリー、どのくらいの差があるかといえば、一番大きいのがトヨタで一番小さいのは家族経営の農家くらいの差があると思ってください。例えばコンチャイトロが1週間操業停止、というのはトヨタが1週間操業停止、というのとイメージは一緒です。1週間くらい停止してもどうってことありません。)
店長の推測では、大きなワイナリーの大きなタンクに入っている大量のワインが、地震で揺れた場合、その水の重量に耐えられずタンクが転んだことが考えられ、
逆にユヤイの取引先のような小さなワイナリーは小さなタンクしか持っておらず、しかも多くのワイナリーの場合今タンクに入っている貯蔵ワインがなかったため、ワインそのものの被害がすくなかったのではないかということです。
今回の地震により、チリのワイン産業が大きなダメージを受けたことに間違いは無いです。
それでも、生産、醸造への影響がとても限られものになったのは、地震が発生した2月は、ちょうどどのワイナリーも年間を通して一番ワインの醸造在庫が無い時期であったことにのが幸いでした。
というのも、1月~3月はもうすぐ始まる収穫に向け醸造場のタンクを空にし、除菌を行い、収穫に備える時期だからです。
2009年はたくさんワインが生産され、平年の10~20%と試算されていた過剰在庫分が主に大手のワイナリーのタンクに貯蔵されており、それらのタンクが破損してワインが流出したところが多かったということのようです。
膨大なワインの損失があったことは間違いありませんが、もともと過剰在庫分の損失ということで実際の輸出には影響が少ないと考えられています。
驚くべきことには熟成中のオーク樽が保管されていたラックも崩れたという被害が多かったですが、丈夫な樽は転がっても破損することはほとんど無く、熟成中のワインを失うことも少なかったようです。
また、瓶内で何年も熟成させるような超高額ワインを作っているワイナリーがチリには少ないということも、幸いしたようです。
このようなことから考えますと、今回の地震によるチリワインの輸出の実施な被害は、港湾の閉鎖に伴う2~3週間ぐらいの輸出の遅れで、日本の多くの輸入元が輸入している、よく知られている大きなワイナリーのチリワイン達が棚から消えるということは起こらないのではと考えられます。
大手のワイナリーは特に資本力もあり、保険にも加入しているので余震が収まればすぐに設備の再建ができるでしょうし、そこで働く人たちも確実に仕事があることが幸いしています。
コンチャイトロはチリのトヨタのような大企業ですが、非常に労働者想いの企業として知られています。
チリの有名な寄付番組(24時間テレビみたいなものでしょうか?)に寄せられた大手ワイナリーを含むチリ国内の企業からの今回の被災者への寄付金が予想の倍以上の300億円(間違えました。ペソでした。50億円相当でした)を越えたという話です。
小さなワイナリーでは、醸造設備が生きていれば、すぐに今年の収穫に入れますし、こうした小さなワイナリーで働く地元の人たちの家が倒壊するなどしているため生活が心配ですが、それでも、小さいワイナリーにとってはそこで働く人たちは家族同様ですので、生活安定のためにお互いに助け合っているようです。
ところで、小さなユヤイのパートナーの小さなワイナリー、エラスモとギルモアの場合ですが、エラスモはワインと醸造設備を18世紀から使い続けているアドベの蔵(土壁の蔵みたいなの)に入れているのですが、他の建物が全て壊れたのに、この蔵だけはほとんどダメージを受けなかったのだそうです。壁の厚みが30センチはあろうかという堅牢な蔵が無事であったおかげで、ワイナリーはワインと醸造設備を失うことがなかったのが不幸中の幸いでした。
熟成中の樽も2樽ほど失った以外は問題がなかったというから驚きです。
家屋が壊れてしまった人達は、村の中の壊れていない家に身を寄せて、とりあえず当面の生活をしているとのことです。
かなり強い余震がまだあるようなので完全に落ち着けるのはもう少し先ですが、早く落ち着いて生活を立て直し、ワインを作りたいというメッセージが届きました。
ギルモアも家屋などの他の建物は全損だったのに、ワイナリー設備だけは大丈夫だったので、現在はそこで寝泊りしているとのこと。
古いワイナリーの醸造所は気温の変化に耐えられるように壁が厚くなっているところが多い分、周りの施設より強いのかも、と思いました。
(そうかと思えば、ワイナリーの天井が落ちてきたというサンチャゴのワイナリーもあるので、一概には言えませんが。。。。)
ともかくまだかなり強い余震が続いているらしく、その余震で崩れかけていたところがさらに崩れてきたというような報告もありますので、一刻も早く余震が止まって欲しいと祈っております。
ユヤイとしては醸造設備は無事だったものの、ギルモアファミリーやエラスモチームには子供達もいますので、早くワイナリーのメンバーやファミリー達が普通の生活に戻って、安心してワインが作れるように、少しでも小さなワイナリーの当座の現金収入を増やしてあげること、それからワイナリーで働く人達に少しでもお見舞い金を出してあげることが一番のサポートになるかと考えておりますので、これについては微力ながらワイナリーお見舞いキャンペーンをさせていただきたいと思っております。(現在準備中です。今週中にはなんとか始めたいと思ってます。)
ところで、ユヤイにとってはパートナーの国でもあるチリですが、このチリという国の国民性を非常によく表しているエピソードがありましたのでご紹介します。
今回の地震で、私も初めて知ったことなのですが(店長は知っていたのですが)、チリ人というのは本当に愛国心が強くて、色々なニュースでなどで地震でめちゃくちゃになっている町で掲げられたチリの国旗のイメージを見ることが多くありました。
チリ地震写真集 (地震と国旗)
http://www.fotos.emol.com/categorias.asp?C_ID=108&C_Nombre=Actualidad&G_ID=13689
(特に最後の写真(#28)は、この人がだれで、どのようなシチュエーションで取られたのが謎で、今回の地震の象徴的な写真になっている。)
エラスモから送られてきた写真にも国旗が飾られていました。
崩れた住居の上でワイナリーチームが並んでいます。これからこれを片付ける!というメールに添付されていました。あまりに明るい写真なので家の瓦礫の上に立っているように見えませんが。
店長曰く、チリ人はこういう時に愛国心で一致団結する傾向が強い、とのこと。
でもその店長にとって、コンセプションでの暴動と一般市民の火事場泥棒の報道には、酷く失望したものだったようなのですが、昨日その店長ですら驚くニュースが。
それはここにきてチリ国内でブスブスと高まってきた愛国心と ”がんばれチリキャンペーン”的な国内の盛り上がりを受けて
火事場泥棒達が、恥ずかしくなって、盗んだテレビや冷蔵庫、洗濯機などを警察署に匿名で返還してきているのだそうで。ただ返されても、どこで盗んだのか分からないから、警察が対応に困っているんだとか。
余震もまだかなり揺れているのに、冷蔵庫とか担いで帰ってきてるんでしょうから。。。。笑
そして最後に
店長がどうしても書けというので書かせて頂きますが、
今回の地震において、ユヤイにも新聞各社さんや、テレビ局など多くのメディアからチリのワイン産業に関して、電話でのお問い合わせがありましたが、事前の調査も何も無く、いかにもセンセーショナルに不安を煽るような報道内容ありきの取材が多かったのには、大変残念に思うと同時に、非常に疑問を抱きましたし、若干恐怖を覚えました。
(もしこれであたしたちが”チリワインは壊滅的で、値段が上がる”という誘導尋問に、「そうですね」と言ったら、本当にチリワインの値段が上がっちゃうんじゃないか、というような、そういう恐怖です。事実や被害状況がまだわからないうちから大騒ぎしすぎて何が本当かわからなくなるようなことの片棒を担がされそうな恐怖というのでしょうか。)
電話してくる早々、棚からチリワインがなくなっているような映像は取れますか?とか、チリワインは壊滅的な状況ですよね?値段は上がりますよね?(誘導尋問??)などというメディアなどは特に、実情を調査しないで、無理やりニュースを作ろうとしている姿勢が見えました。
大体町の小さなチリワイン屋のアシスタントにチリワインの相場が上がると思うかなんてことを言わせてどうしようというのでしょうか。
ユヤイは、チリワインについて真摯に取材してくださるメディアさんには真摯にお答えしますが、トンチンカンなことを聞いてくるメディアさんにはそれなりの対応をしますので、ご了承ください。
何しろ今地震のこともあって本当に忙しいのです。